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第41話 金で買われるような、安い女だったとはね

last update Date de publication: 2026-10-11 18:18:25
「特許ごときが、自分たちを守ってくれると思っているのか。ずいぶん楽観的だな」

 NEXUS ONEの説明会場で、燎はまだ正臣を見て笑っていた。

「特許は使わない」

 燎の言葉に、正臣が鼻で笑った。

「では、何も作れない。灯里には会社も、開発者も、試験データもない」

 周囲で話していた人たちが、こちらを見る。

 燎は正臣を見据えた。

「最初から作り直す」

「ちょっと。作り直すのは私よ。そんなの無理よ」

 燎が私へ顔を向けた。

「なら、この二人に全部渡して諦めるか」

 私は唇を噛んだ。

 渡したくないに決まっている。二人には、何一つ。

 でも、何年もかけて作ったものを、また最初から作り直すの?

 奏汰が五歳の頃、腹痛の原因が分からず、食べたものも薬も睡眠も、私が一つずつ記録した。父と何度も設計をやり直した。

 CARE-LINKは、そうやって作ったものだ。

 簡単に言わないでよ。作るのは私なのに。

 燎が一歩近づいた。

「同じものを取り返すだけで満足する女なら、俺はここまで賭けていない」

 強い目が、まっすぐ私を見ていた。

「俺が欲しいのは、CARE
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  • 夫がメイドを私の名前で抱いた――すべてを奪われた元・天才医療研究者は、冷徹社長に溺愛される   第55話 倒れた夜

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  • 夫がメイドを私の名前で抱いた――すべてを奪われた元・天才医療研究者は、冷徹社長に溺愛される   第52話 この人だけは嫌

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  • 夫がメイドを私の名前で抱いた――すべてを奪われた元・天才医療研究者は、冷徹社長に溺愛される   第51話 私が残したのを忘れないで

    「泊まるの?」  久条屋敷の客間前の廊下で、莉乃は柊吾を見た。 「志津子さんに勧められた。話が長くなったからな」  正臣の母である志津子と、新社長に就任した柊吾。  そんなに親しかったの? 「それで、こんな時間に何をしてるの?」  柊吾はガウン姿の莉乃へ目を落とし、口元だけで笑った。 「水を取りに出ただけだ。……君こそ、正臣はご機嫌だったか」  莉乃は答えなかった。あの寝室でのことを、柊吾には話したくなかった。  答えない莉乃を気にした様子もなく、柊吾は話題を変えた。 「子供が絵で答えられるようにしたのは、君だろう。昨日の説明を聞いた。明日、開発の連中にも聞かせてくれ」  正臣は、笑った口元が違うと言った。  柊吾が見ていたのは、自分が考えて変えたところだ。灯里ではなく、莉乃として。  正臣に、また抱きしめてほしい。  それなのに、この男の前からも離れたくなかった。 「明日、行くわ」  その約束を、正臣には言わないでおこう。  階段へ向かいかけて、莉乃は足を止めた。  志津子が歩いてくる。顎で切りそろえた白髪はいつもと同じなのに、着ているのは絹の寝間着だった。 「待たせたわね」  莉乃への言葉ではなかった。  志津子は柊吾の襟をつかんで引き寄せ、唇を重ねた。柊吾の手が、ためらいもなくその腰を抱く。  正臣の母親と、柊吾が。  莉乃は二人を見つめたまま、動けなかった。  どういうことなの。  柊吾よりもずっと年上の志津子が、当たり前のように口づけている。  正臣まで言葉を選ぶ、この人だ。今も、息子はすぐ近くの寝室で眠っている。  会社の話をするために招いたのではなかったのか。  柊吾は、その手を離さなかった。  押しつけられているのなら、こんなふうに腰を抱くだろうか。  さっき自分を褒めてくれた口が、志津子へ笑いかける。その顔を見る方が、キスを見た時より嫌だった。 「……正臣さまは、ご存じなんですか」  志津子がこちらを向いた。襟にかけた手は、そのままだ。  光のない、黒々とした目が莉乃を見据えた。 「私が誰を選ぶか、息子に許してもらう必要はありません」  見られたことを、気にしてもいない。  莉乃が返事を探していると、志津子は続けた。 「柊吾さんに頼まれなければ、あなたをこの家に置くつもりは

  • 夫がメイドを私の名前で抱いた――すべてを奪われた元・天才医療研究者は、冷徹社長に溺愛される   第50話 僕が、ちゃんと灯里に戻してあげる

     正臣の親指が、莉乃の口の端をなぞった。 「笑うと、ここがこんなに上がったかな」  莉乃は、何も答えられなかった。  その口元を、この人は見比べている。今、ここにいない灯里と。 「……変ですか」  正臣の指が離れた。  怒られるよりも嫌だった。もう触れたくなくなったのだろうか。 「変じゃないよ。少し違って見えただけだ」  名前を呼んでほしいとは言わずにいた。灯里として扱われることも、自分で選んだ。  でも、楽しくて笑った時くらい、自分のままでいたかった。  どうして、そんなところまで見つけるの。  自分が笑ったことを喜んでくれたと思っていた分、悔しかった。  正臣は優しい顔のままだった。  莉乃は口を開きかけた。昨日の質問に答えたのも、今夜ここにいたのも、私でしょう。そう言ったら、この人はどんな顔をするのだろう。  言えなかった。  あんなふうに甘えたからだ。灯里の笑い方を忘れて、自分のままで笑ってしまったから。 「気のせいかな。おいで、灯里」  差し出された腕の中へ、莉乃は戻った。  さっきはあれほど嬉しかったのに、今は顔を見られたくなかった。 「疲れたんだね。もう寝よう」  正臣が髪を撫でる。  莉乃は、そっと顔を上げた。 「もし、私が灯里じゃなかったら、どうしますか」  正臣の手が止まった。  見とれるほど整った顔に、優しい笑みが浮かんでいた。  その目が、ゆっくりと見開かれる。莉乃が笑ってみせても、正臣はまばたきもせず、その顔を見つめていた。 「……正臣さま?」 「大丈夫だよ」  正臣の指が、もう一度、莉乃の頬に触れた。 「僕が、ちゃんと灯里に戻してあげる」  さっき褒めてくれた時と、同じ声だった。  莉乃は頬に触れる手を両手で包んだ。怖がったことまで、気づかれたくなかった。 「……はい」  自分のままでも愛してくれるか、聞きたかっただけなのに。  もう、聞き直せなかった。  その手に頬を寄せたまま、莉乃は口元が見えないように顔を伏せた。  正臣の胸に額を押しつけると、彼は何も聞かずに、また髪を撫で始めた。  こんなに近くにいるのに、好きだと言ってほしいとさえ言えない。  優しい声が欲しかった。けれど、顔を上げれば、また違うところを見つけられるかもしれない。  莉乃は、眠くなった

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